今年度の研究は以下の4つの課題を進めた。 1.本研究の基本テキストである中国古代の三大水利書『尚書』禹貢、『史記』河渠書、『漢書』溝洫志の比較講読を行った。これらは三つの黄河の河道に対応しており、禹貢は前602年の変動以前の旧黄河、河渠書は戦国・秦・前漢の旧黄河、溝洫志は前漢末・後漢の旧黄河の河道を記したものである。三書の記述の視点の違いに注意しながら整理し、関連地名は地図に落とした。 2.ランドサット衛星写真の購入と分析。購入枚数は26枚、第1類は黄河下流域の6枚、黄河最北流時の下流域を考察した。第2類は黄河が東流から北流へ屈曲する黄河河道変遷のキ-ポイントで災害多発地の4地域であり、春秋各2枚ずつ計8枚購入し、増水時と渇水時の水量など状況の差を比較した。第3類は黄河南遷時の河道を見るために、淮水の流域8枚、第4類は災害と河川の関係を考察するために、1991年8月に水害に遭った寿春付近の淮水流域4枚を購入し、平時と洪水時とを比較した。 3.スキャナでの画像処理の試み。備品としてスキャナ、データ容量に対応できるようにMOドライブとラムボードを設置し態勢を整える。衛星写真の読みとりを試みる。衛星写真を接合したり、画像解析度を高めたりしたが、今後別のソフトを使ってどの程度整理分析できるのかを検討する。 4.漢代郡県地図の整理作成。研究の初年度として郡県地図の画像をどのようにスキャナで取り込み、郡県別のデータをどのように整理できるのかを検討し、次年度の本格的な作業の準備とした。県別に地図から検索するために、漢代13州の地図から郡を検索、郡からさらに所属県を引けるように検索用地図を作成する基礎資料を作成した。また郡県の地名を画像入力しやすいように『漢書』地理志の郡県名を台紙に張り付けて整理した。次年度では、県単位の資料を入力し、黄河下流域の都市の状況を把握できるようにする。
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