初年度の研究では以下の4つの課題を進めた。(1)本研究の基本テキストである中国古代の三大水利書『尚書』 ●貢、『史記』河●書、『漢書』 溝洫志の比較購読を行った。(2)ランドサット衛星写真を購入し、黄河最北流時の下流域や、黄河が東流から北流へ屈曲する箇所で、増水時と渇水時の水量など状況の差を比較した。(3)スキャナでの画像処理の試みたが、さらに画像処理ソフトを使ってどの程度整理分析できるのかを検討した。(4)漢代郡県地図を整理作成した。 2年度の研究実績は以下の通りである。黄河下流域のランドサット衛星写真を分析して見ると、以下のような状況を確認できた。(1)黄河は黄土高原の丘陵を抜けると広大な平原を流れている。現在の黄河は開封の東で極端に流れを変え北流している。(2)前 602年以前の黄河河道は伝説上の●の治水の時代のものと考えられる。ランドサットの画像ではこの付近に明らかに土壌の異なる黒い区域を確認できる。黄河の河水の遊水池であれば土砂が堆積し、水が無くなった後でも周辺の土壌とは異なった土壌を残しているはずである。●州北の黄河北岸にも、土壌に大きな渦の広がりが見られ、河流の痕跡であると思われる。(3)前 602年以降の春秋戦国・秦・前漢の河道は、滑県北から●陽にかけて白い大きな広がりとして見える。●陽は前漢武帝期に決壊した箇所であり、河流は北上した。 以上の確認した点は、ランドサット衛星のデジタルデータを白黒の濃淡に置き換え、地球表面の歪みを補正した写真から読みとった結果である。細部の分析は、さらにデジタルデータ自体を画像処理して行わなければならない。これは今後の作業として残された。
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