継続第2年度において、本交付申請時に計画した研究課題の目標に向かって、いくつかの研究成果の準備・完成に努めた。その一端として、裏面に記載する論文・訳注を発表したが、そのうち第1論文は、当該文献にもとづき、前漢昭帝以降における儒学の官学化についてあらためて新見解を披瀝しようとした一篇、第2論文は、従来の私見を補強するために、官歴の観点から、儒学史上における董仲舒像を再検討しようとした一篇、第3論考は、『漢書』の撰看班固の抱懐する思想を解明するために、その伝記を訳注化した基礎的作業の一篇である。それらはいずれも向後の研究の大成・深化を期した研究成果である。 なお現在以下の7点の論文の原案を作成し、公刊を予定している。 1.儒教の国教化をめぐる学説史、2.『漢書』と班国の思想(続)、3.班固と董仲舒、4.塩鉄論議後史-〓氏専権と宣帝奪権の時代-、5.前漢末期における儒教の確立-宣帝・元帝の画期を中心として-、6.儒教の国教化をめぐる問題点、7.『後漢書』班国伝訳注(下)。 1は狩野直喜から板野長八にいたるまでの儒教の国教化をめぐる学説史を年代順に整理跡付けた作品であり、研究実績報告書の一部として、来年度(最終年度)に小冊子の形式で刊行する予定である。また2・3は班固の思想を分析するとともに、それと董仲舒の学説との相関性を吟味した研究であり、4・5は前漢武帝以後の宣帝・元帝の治世年間を中心に、儒教の形成と確立を模索した論考であり、6・7は以上の論文を総括するための最終的な研究成果となるはずである。本年以降これらを順次発表し、一書として上梓することを計画している。
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