本研究は、古代朝鮮史の基本史料とされてきた『三国史記』『三国遺事』を広く東アジア地域史研究の共通テキストとして活用できるよう、その原文をパソコンに入力し、さらにデータベースソフトに組み込み、原文の訓読、注釈、解釈といった作業を進めてゆくための基盤を整えることを目的とする。2年間にわたる研究実績の概要は以下の通りである。 1 『三国史記』『三国遺事』データベースについて 『三国史記』は中宗7年本(学習院大学東洋文化研究所刊)を底本とし、『三国遺事』は正徳本(同上)を底本とし、諸版本を参照しつつ検討を重ねて定本(Ver.1)の入力を終えた。文字コードはunicode、外字はBMPによって表示し、校勘記および底本(JPEG)と連動させるため、HTMLによらてデータベースを構築した(約600MG)。底本の版権者の許可を得て、CD-ROM媒体で公開する。 2 『三国史記』『三国遺事』データベースのネット公開および一字索引システム 現在unicodeに対応した検索システムは公開されていないので、PEAL等を使用した独自のシステムを開発する必要があり、今後の課題とせざるをえないが、一字索引システムについては、QGREP等のためのSHIFT-JISテキスト、unicodeテキスト(Rテキスト)、unicodeテクスト(+『今昔文字鏡』)という3つのフォーマットを用意した。したがって、冊子体でなくフロッピー等の媒体で公開する。 3 その他 可能な限り最良の定本作成と、今後の訳注作業の基盤を整えるため国内外の『三国史記』『三国遺事』の版本、訳注研究、及び文献史料蒐集と、関連資料(韓国ソウル大学奎章閣所蔵拓本)、台湾故宮博物館所蔵職貢図)の調査を行ない、さらに文献目録(未完〉の作成を行った。以上の過程でえられた知見と成果の一部は、『東アジアの王権と交易』(青木書店)、『古代東アジアの民族と国家』(岩波書店)や他の発表論文等に活用した。
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