研究概要 |
昨年度主として取り組んだ寧波の都市水利は、「唐宋期における浙東〓県の都市化と它山堰」 (中村学園研究紀要30)として発表した。今年度は寧波と並行して、成都に重点を移して考察を深めた。すでに蒐集していた日中の著書・研究論文等の検討、『(嘉慶)四川府市』、『(康煕)四川成都府志』、『(嘉慶)成都県志』、『(同治)重修成都県志』等の地方志及び『成都文類』、『都江堰水利述要』等の原典史料を精査しつつ、大網をまとめた。それは、9月、北京で開催された「城市河湖功能与規格学術検討会」で「成都的城市水利和都江堰」という題目で発表した。現在、成都都市水利の論文としてとり纏め中である。 今年度、特記しなければならないことは、夏季における集中豪雨によって大規模な洪水被害が発生したことである。長江流域及び東北部の松花江流域における直接の経済損失は1,666億元(約2兆8000億円)にのぼるといわれている。中国政府は、人口700万人を擁する湖北省の省都武漢と江西省の交通要衝都市九江を水害から守るため人民解放軍を大量に投入して対応に当たった。そこで、研究対象都市に新たに武漢を加えるととにした。11月の中国水利史研究会で「現代中国の水利事情〜' 98長江中流域における洪水災害の状況と原因〜」の発表を行った。長江中流域は、古代から水害に悩まされてきた事情があり、その拠点都市武漢をめぐる水利問題の研究は歴史的に膨大な蓄積をもっており、研究をすすめていく上で考察の幅を広げている。 今年度も入手可能な文献類は設備備品として購入し、入手困難な史料・文献類は東大東洋文化研究所、大阪市立大学、兵庫教育大学、東洋文庫等に出向いて、複写(写真版またはゼロックスなど)によって蒐集して利用している。
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