研究概要 |
1.「説得」の現象とその含意するところを、ギリシャ・ラテンの諸史料より探り出す作業を継続して行った。一昨年度は3-4世紀のキリスト教史料を取り上げ、関連する研究文献の購入・検討を踏まえて研究したが、11年度もそれら史料、特に3世紀アフリカ・カルタゴの司教キプリアヌスが、司教として一般信者に及ぼした影響力を、「説得」概念を踏まえつつ考察した。 2.ローマ帝国社会史、初期キリスト教社会史の文献の購入・検討を行い、2-4世紀のローマ帝国が都市を依然として中心としており、そこにおける市民の間に、「説得」を媒介とした有力者と庶民との関係が重要であったことを見いだした。その上でそれら都市に生きていたキリスト教徒が、それらの関係にならいつつ、独特な「説得」による人間関係を創り出していったことをある程度論証し、考察を進めた。 3.古代都市が衰退して行く過程にキリスト教徒がどう関わったのか、という問題を、彼らの宗教生活の実態や、迫害・宣教の方法と実状を史料に即して明らかにすることを目指した。また社会学・文化人類学の手法を用いた新しい研究動向をも検討した。上記2と合わせ、これらの問題については平成11年6月の日本基督教学会東北支部学術大会で報告した。特に社会学的手法による初期キリスト教拡大についての新しい動向として、R.SAtark,The Rise of Chirisianityに関する論考を公表する。 4.ローマ帝国社会の「説得」のならわとそのし機能、そのキリスト教的形態、に関してはある程度の成果を得たので、平成12年5月の日本西洋史学会において報告する予定である。 5.主として東京大学で、文献史料の調査を行い、研究者との交流を行ったが、昨10月来日した連合王国オクスフォド大学前講師B.Levickと、ローマ帝国社会史に関する研究交流と情報交換を行った。
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