研究概要 |
13,4世紀神聖ローマ帝国国制との構造連関の中で、スイス連邦の成立と発展を捉える基本視点を据えて、1291年原スイス永久同盟の国制史的発展を実証的に究明した。前年度の研究で、この同盟が、13世紀の帝国ラント平和令の諸条項を継承し、そのラント平和条項をより一層徹底した形で盟約されているのが、現存する1291年の同盟文書から明らかになった。原スイス永久同盟の基本的なあり方は1315年更新されても変わらず、皇帝・国王との国制的関係を維持しながら、渓谷内外のラント平和を誓約で遂行していた。このことを論証するために、1487年までの皇帝特許状40通を手掛りに、皇帝と諸同盟(1353年の八州同盟、1513年の十三州同盟への発展)との一貫した有機的な結び付きを見るとともに、1513年の同盟文書も含めて10通の諸同盟文書、さらに3通の諸同盟共通の「連邦規約」的な文書を重要な史料として、十三州同盟に至るスイス連邦の発展を明らかにした。その結果、ハープスブルク家との利害対立は漸次激化し、特に14世紀中頃以降、同家の領域拡大政策に対抗するために,諸同盟への拡大と同時に,改めて皇帝(国王)特許状の威力が大きかったことが、確認された。すなわち、14,5世紀にスイス連邦が国家的形態を内外とも明確にしてくるのは、13世紀以来、一貫して皇帝・国王との密な繋がりを求めながら、有力になっていたハープスブルク家に対抗し、同時に、常に1291年と1315年の原スイス永久同盟を軸に、最初は8つの、のちには13の都市共同体・渓谷共同体による極めてルースな同盟関係の盟約とその絶え間ない更新の結果なのである。13世紀から16世紀初頭までの神聖ローマ帝国の国制的背景を念頭におきながら、また、スイス固有の地形と風土を前提にして、スイス連邦の成立と発展を具体的に叙述するのが、今後の研究で展開する主要目的である。
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