本年度は、イギリス帝国の脱植民地化に関する最新の研究文献の購入を継続し、一昨年度および昨年度に購入した資料・文献もあわせて、イギリス帝国の脱植民地化の比較検討とともに他帝国との脱植民地化の比較研究を行った。その過程で、平成11年8月には、インドを訪問し(ただし、その外国旅費は本科研費以外で充当)、ニューデリーの国立公文書館でインド独立以降の英印関係についての資料を調査、さらに9月には脱植民地化過程と独立後の「南の世界」の発展についてのイギリスでの研究で指導的立場にあるTom Tomlinson教授と英帝国史の脱植民地化についての討論を行った。本科研費の報告書では、本年度に活字として発表した業績を提示してあるが、こうした資料調査や討論に基づいて、研究会において7月にはイギリスの「スエズ以東」からの撤退過程をめぐる報告を行い、さらに9月には脱植民地化期以降の英豪関係・英―ニュージーランド関係についての報告を行った。また脱植民地化過程の比較を含むイギリス帝国と日本帝国の比較についての論文がドイツ語でドイツの専門誌に掲載されたが(科研費報告書に所収)、これはかなりの関心を呼んだようであり、ドイツの代表的新聞であるFrankfurter Allgemeine Zeitungで、詳しく紹介された。この科研費でとりくんだ、イギリス帝国の脱植民地化研究を基盤としつつ他の帝国にも比較の視野をのばしていく研究方向の意味が、こうした国際的反応によっても確かめられた。
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