本年度は、ショーンバーグ黒人文化研究センターから関係する資料コレクション(マイクロフィルム版)を購入し、アフリカ関係の記事と論文を集中的にリサーチした。具体的には1930年代の人種思想と、アフリカニズムの関連を探るために、マ-カス・ガ-ヴェイらの組織する全国黒人改善協会(UNIA)の資料の解析を進めた。とくに集中的に行ったことは、同コレクションのなかのWPA(Works Project Administration)によるプロジェクト「ハ-レム」の資料を解析したことである。ニューヨーク市における「アフリカ帰還運動」や黒人教育、黒人の社会化や混血、ハイチ革命の影響などに関する史料の分析から、黒人の意識のあり方を内面から考察することができた。ショーンバーグ・コレクションの史料については、下に示した国際シンポの報告時にニューヨーク公立図書館におもむき、ちょくせつブリーフィングを受けることができた。これによって史料の全貌をほぼ把握することができたといえる。 他方、学会等での活動としては、11月にノースカロライナ大学(UNC)のSonja Haynes Stone Black Cultural Center主催の黒人文化史についての国際シンポジウムで発表したほか、国内では6月にアメリカ学会でポストコロニアルのアイデンティティ論を批判する報告した。10月には、日本政治学会の多文化主義のセッションで、人種文化と政治的統一性の問題について報告をした。この内、アメリカ学会での発表は、論文として公刊した。また、従来から進めていた19世紀の黒人史研究の成果を一書にまとめて東大出版会から刊行した。
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