従来の封建制度の研究は、国制史上のひとつの重要な制度としての認識に立ち、制度面からの分析が重要視されてきた。その制度的な側面からの研究は、歴史も長く、かつ研究蓄積も多く、したがって詳細にわたっている。またもうひとつの研究側面は国の実質的な力、つまり軍事力の方面からの研究であり、武具、馬具よろい、かぶとの方面からの研究であった。こちらの方は、最近の考古学上の発掘の結果、幸運が幸いして木製、革製の武具もみつかるように、豊かな成果をあげてきている。本科研の研究テーマは、これらの側面からの研究ではなく、馬自体の研究を通して封建制度の特色にせまることであった。2年間の研究のおかげで、だいぶこのあたりの様子が明らかになったので以下箇条書に新知見を記しておく。 (1) 英国を含む西欧中世の騎兵は、1050年頃より著じるしい変化を経験したこと (2) その変化とは、馬高が130cmより150cm以上に改良されたことによること (3) この改良が可能になったのは、スペイン、南伊より良馬が購入され、種馬となったこと (4) その結果、大きな槍を小脇にかいこみ、一列横隊で突撃することが可能になったことーこれが西洋中世の騎兵のイメージであるー (5) これ以前は、槍は投げ槍、もちろん弓も使用していたこと (6) この結果をわが国にあてはめれば、絵巻物にある馬は大きく描かれすぎ、あくまで弓を中心とした騎兵で、馬自体は小・中型馬であったこと
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