研究概要 |
本年度は当初の研究計画にしたがい、まず以下の2点のレファランス書を購入し、これらを十分使いこなせるよう努めた。 J.B.Schneyer,Repertorium der lateinischen Sermones des Mittelalters fur die Zeit von 1150-1350,11Bde,Munster,1969-1990. T.Kaeppeli,Scriptores Ordinis Praedicatorum Medii Aevi,Roma,1970- (刊行中、既刊4冊)これらは現存説教史料の目録であり、史料の所在と著者、著作年代、写本の外形的特徴など一般の史料目録と共通する情報のほかに、当該説教のジャンル・主題・展開法についても摘記している。本年度はこれらの目録を精査することにより、以下の2点に主力を注いだ。 1 私が関心をもつ個別主題(経済思想、商業・商人観、民間信仰)に関係する説教史料の探索とマイクロフィルムによるそれらの入手。 2 説教のジャンル・主題・展開法に関する記述は、この2書のように大量に収集された場合、それ自体が貴重な史料であり、説教活動の時代的・地域的趨勢や説教内容・方法の変化を統計的に追うことを可能にしてくれる。今年度は、12-14世紀間の托鉢修道会に関してこうした調査を試み、いくつかの全体的傾向を見出そうと努めた。 さらに今年度は、説教活動について記した同時代人の史料の解読と分析を行った。とくにJacques de Vitry,Historia Occidentalis(1220年)を精読して、説教史上重要な個所の訳出を試みた。 以上の研究は現在も進行中であり、成果を発表するには至っていない。
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