研究概要 |
本研究2年目の今年度は、交付申請書に記した研究計画に基づき、デンマーク初期絶対王制の構造に関する基礎的研究および法的基盤に関する検討を行った。具体的には関西学院大学中央図書館への資料調査出張により、国王フレデリック三世(在位1648-70)及びクリスチャン五世(在位1670-1699)治世下に出された主要な法律をSchou,J.H.:Schous Forordninger I-II,Copenhagen,1777-1825,より複写した。複写した法律はドキュメントファイルを用いて整理した。これらの法律をもとに本年度は特に貴族を中心とする身分政策に焦点を当てて考察を行った。その研究成果が「デンマーク初期絶対王制における身分政策-1661-1671年の対貴族政策を中心にー」『北海道東海大学紀要(人文社会科学系)』第11号、1999年3月発行、39-54頁である。 さらにデンマークの書店より購入した文献を用いて、絶対王制初期(フレデリック三世治世下)の主に行政機構(中央・地方)及び経済(重商主義)政策について考察を行った。中央行政に関してはスウェーデン式のkollegiumの設立、また地方行政機構においては1662年のAmt制導入が大きな転機になっていることが明らかになった。また重商主義政策に関しては貿易会社の設立、官営マニュファクチャーの創設を行ったものの、期待したほどの利益が上がらなかったことが判明した。 次に、絶対王制を法的に支える「国王法(1665年制定)」については、これが当時の西欧世界でも特徴的な法律であること、そして第3-7条に絶対王にとっておよそ必要な権限がほぼ規定されていることが明らかになった。 また、デンマーク絶対王制期の年表と文献目録は、インターネット上の北海道東海大学国際文化学部の佐保研究室ホームページに発表すべく現在準備を行っている。http://www.htokai.ac.jp/上がスタートページになる予定である。 今後は昨年度及び今年度に入手した資・史料をもとに1661-1699年におけるデンマーク初期絶対王制の構造を政策、機構の面から詳細に考察し、デンマークの絶対王制が確立する時期とその過程を考究する予定である。
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