今年度は三年計画の研究の最終年にあたるために、研究を取りまとめる作業が中心となった。 まず、平成12年度に東京大学出版会から刊行される予定の共同論文集『病気と医療の歴史学』(仮題)の拙原稿「病気と医療の世界史」(仮題)の執筆作業を進めた。史料調査も順調に進み、また共同執筆者との内容のつめも十分におこなうことができた。原稿は平成12年2月末までに完成する見通しがついた。 つぎに、山川出版社のシリーズ「歴史のフロンティア」に執筆することが内定している『帝国主義と健康』(仮題)の構想をこの原稿をもとに考えてみたが、タイムスパンを近現代に限るのではなく、むしろ古代から現代までを鳥瞰できる視座を設定し、そのうえで人間社会にとって健康と病気とは何かを考察する内容をだいたい決めることができた。 そこでは開発原病を中軸にすえ、歴史の進歩が状況によっては病気の環境を悪化させることがありうること、しかしそれでも社会の発展が病気の論理を押し切って進行することを明らかにするつもりでいる。 さらに、近年の「文化史」、および「国民国家」論の動向をふまえて、たとえば、アメリカの建国をめぐる言説と病気の歴史とが深くからんでいる点なども論じていきたい。 なお、平成12年度はイギリスに留学することが決まっており、彼の地でさらに史料を調べたうえで、平成13年度に執筆することにしたい。
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