ギリシア人の歴史思想の比較研究を行うために、代表的歴史家としてヘロドトス、トゥキュディデス、クセノポン、ポリュビオスの4人を選び、キー・ワードと考えられる語彙の用例を、彼らの史書から検索・抽出するという作業は、昨年度行った基礎作業と考察を踏まえながら、本年度も継続された。考察を進めるなかで、関連する語彙についても、あたってみる必要が生じたからである。 aletheia(真実) anagke(必然) andreia(勇気) arete(徳、勇敢) barbaroi(野蛮人) chresmos(神託) daimon(神霊) demos(民衆) dike(正義、罰) doxa(栄誉)eleutheria(自由) epithymia(欲望) eusebeia(敬度) Hellenes(ギリシア人) hybris(倣慢) kratos(力) mantis(予言者) moira(運命) patris(祖国) sophia(智恵) theos(神) time(名誉) tyche(偶然、運命) xenos(外国人)などを、ひとまずキー・ワードに選定して出発したが、その形容詞形や派生語、さらに同義語の用例についても検討しなければならない。それらの全体的考察には、なおしばらくの時日を要する。次年度を期したい。 研究史上の問題点については、新刊書を中心に、ひきつづき参照・整理を重ねた。それらにおいて、比較という観点が前面に出されることは、多いとはいえないのであるが、いくつかの興味深い論点を確認できたことは、収穫であった。
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