主としてアイルランド系カトリック(イタリア、ポーランド、ドイツ系等を含む)が、アメリカ・カトリシズム及びオーストラリア・カトリシズムの形成に果たした役割を跡付けることを課題とする本年度の研究実施計画に従って、我が国において直接当たることが困難な未見の関係文献・資料収集に取り分け意を注いだ。特に我が国において殆ど皆無に近いオーストラリア・カトリシズムに関する文献・資料が多数入手出来たことは、多大の成果であったと言わなければならないであろう。さらにアメリカ・カトリシズムとオーストラリア・カトリシズムの固有性を跡付けるために必要とされる、カトリシズムの普遍性を代表するバチカン(教皇庁)外交(特に対カトリック移民政策または対英語圏社会・文化政策)に関する文献・資料を収集出来たことも、此の度の研究を完成させる上でなによりも当を得た成果になろうかと思われる。 また本年度の研究実績として、昨年度及び本年度に収集した関係文献・資料を援用して、バチカン外交に関する拙稿及びカトリック教会の革新的社会・文化政策に関連する拙著を取りまとめることが出来たことは、研究の最終的な取りまとめを行うにあたってのよき見定めまたは蓄積になろうかと思われる。いずれにせよ本研究に資する関係文献・資料の収集及び分析は、当該研究分野の専門家からもその成果を多とする評価が得られたことに照らし合わせ、必ずや本研究が目指す「米、豪・カトリシズムの形成要因に関する比較研究」に適うものであり、ひいては最終目的となる「移民国における少数派の同化と異化」を明らかにし得るものと思量するものである。
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