平成9年度から平成11年度にかけて、「移民国における少数派の同化と異化-米、加、豪・カトリシズムの形成要因に関する比較研究-」と題して取り組んできた成果は、直接的にには関係拙稿で、また間接的には関連の拙稿または拙著で、それぞれ発表する機会を得てきた。当該研究課題と直接関係する研究成果は、「両大戦間のデトロイト教区とカウグリン問題」という拙稿であるが、移民国における少数派の同化と異化を象徴的に顕示するアイルランド系カトリックがアメリカ・カトリシズムの形成にどう係わってきたかを、実証的且つ批判的に跡付けることが出来たのではないかと思う。先行研究がこれまで殆んど無い状態が続いてきた現状を考えると、いささかなりとも未開拓の分野に鍬を入れ貢献出来たのではないかと考える。また現在急速に進むアメリカニズムという名のグローバリズムを理解する上でも必要なことではなかったかと思われる。但し、カナダやオーストラリアのカトリシズムとの比較研究ということについては、どちらかというと、バチカン外交というフレームを通して考察することにならざるをえなかった。いずれにせよ此の度の研究期間中に研究発表した拙稿「バチカン外交と現代の国際政治」や、また拙著『国内新体制を求めて』等にもそれぞれ間接的に当該研究課題の成果の一端を反映させることが出来たことは、次なる関連研究への踏み台になるものと思っている。
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