研究課題/領域番号 |
09610405
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
古瀬 清秀 広島大学, 文学部, 助教授 (70136018)
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研究分担者 |
安間 拓巳 広島大学, 文学部, 助手 (40263644)
西別府 元日 広島大学, 文学部, 助教授 (50136769)
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キーワード | 鍛冶実験 / 奈良時代 / 鉄滓 / 精錬鍛冶 / 鍛錬鍛冶 |
研究概要 |
本年度は鍛冶実験及び奈良時代以降の各地の鍛冶関係の遺跡出土品の集成、文献の収集を行った。鍛冶実験では製作実験対象は5世紀代の古墳出土素環頭大刀で、鍛冶炉の築炉から精錬、鍛錬、火作りに至る一連の鍛冶工程を実施した。この際に生成した錬滓はすべて採取して、遺跡出土鉄滓との比較資料とした。また、一連の鍛冶工程は写真及びヴィデオによる記録撮影を行った。鍛冶関係資料としての遺跡及び出土考古資料の収集は、新潟県新津市周辺の北沢遺跡、鳥取県米子市周辺遺跡群、奈良県飛鳥池遺跡、神戸二宮遺跡などの、奈良時代〜平安時代の資料を実見し、実測図等の記録作成、写真撮影を行った。 本年度の研究で指摘できることは、まず鍛冶実験では昨年実験した鉄鍬、鉄斧など小型鉄器の製作と比較して、大型品の製作であったため、総じて鉄滓は大型で、各種の鍛冶工程の資料が得られた。これらをこれまでに採取した各時代の鍛冶遺跡出土鉄滓と比較してみると、鉄刀作りが鍛冶技術の集大成を示していることが理解できた。逆に各遺跡出土鉄滓がどの工程に伴うものであるのかが一層明確となり、古墳時代を中心に多彩な鍛冶の内容がわかる非常に有意義な実験といえる。 また、鉄滓からみると、奈良、平安時代の鍛冶の実態は基本的には、古墳時代に完成した鍛冶技術体系をほぼ踏襲するものであるとわかったが、ただ、古代末から中世にかけて鉄生産が一気に増大することに連動して、鍛冶の内容も大きく変容することは大きなポイントである。遺跡出土鉄滓のうち、2kgを超える超大型品が出現するのがこの時期で、精錬鍛冶と鍛錬鍛冶が分化する可能性が指摘できるのである。 次年度にわが国の鍛冶を総括するためのデータの大部分が、今年度までに収集できた。
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