研究概要 |
本研究は,(1)弥生時代中期前半の再葬墓=大曲遺跡(新潟県北蒲原郡安田町)発掘資料の整理・分析と,(2)その造営主体たる集落と考えられる山ノ下遺跡の発掘調査を主とし,これに(3)近接する六野瀬遺跡関連遺跡の調査データを加味して進める。 2ケ年計画の初年度は,(1)と(2)を実施した。(1)は大曲遺跡第4号墓坑出土土器13個体の復元作業と製作技術の観察を実施した。容骨器である完形土器に,漆を用いた補修痕が認められる例があることは,土器の製作から墓坑への埋置までに長期間を経ていることを示す注目すべき事実である。一方,共伴した剥片には微細な刃こぼれがあって,これを軟部組織が残る遺骸の解体によるものとすれば,再葬墓造営過程のなかで,容骨器である土器の扱いと,死者の発生以後の遺骸の扱いがどのような関係にあるのかを考える必要が生じてくる。 (2)は山ノ下遺跡の試掘調査を実施した。試掘区5か所のうち1か所で大曲遺跡と同時期の遺物集中区が検出された。数量は多くないが,土器では壷が少なく深鉢が多くて,再葬墓と全く異なる組成であること,石器でも石鏃・石錐が明瞭であるなど,生活址であることは明らかである。そして土器の細部の特徴が大曲遺跡と一致しており,150m隔てた両遺跡が墓地とその造営主体という関係であることが判明した。母集落と墓地とまでは断じえないものの,2つの遺跡を直結できたことは意義深い。土器はもちろん,剥片類を含めて両遺跡出土資料の比較分析が重要視される。 第2年次は,初年度の(1)大曲遺跡出土資料の整理作業が難航したため,これを継続して終了させるとともに,(2)山ノ下遺跡の発掘調査を小規模ながら実施して両遺跡をより具体的に関連付けるデータを得ることを主眼として研究を進める。
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