本研究の第3年次として次の3項目について作業を進めた。 (1).新潟県安田町大曲再葬墓遺跡発掘資料の復原・検討。 2か年をかけて実施した第4号墓坑に続いて、第2・3・5号墓坑の復原を進めた。細片化しており難渋したが、第2・3号については概要の把握まで達した。第4号と同様に漆を塗ったり、穿孔緊縛によって壊れた土器を補修した実例が明瞭である。また、形を復原し得ない小破片は、再葬過程の断片を示す可能性が考えられ、注目したい。 (2).山ノ下遺跡と大曲遺跡出土土器の比較と周辺の同時代遺跡資料の検討。 両遺跡は、生活跡と再葬墓というだけでなく、出土土器の系統構成に違いがある。大曲再葬墓では北陸・長野方面の資料が明瞭なのに、山ノ下遺跡は仙台平野方面という従来当地域では顕著でなかった系統の土器があり、その違いが顕著である。 また、両遺跡と同時期の遺物は横峰A遺跡でも認められ、小山崎遺跡でも可能性ある資料がある。大曲遺跡と他の3遺跡は墓と生活遺跡として一連の遺跡群と考えられる。 (3).再葬墓造営過程を復原するデータの集成。 弥生時代再葬墓遺跡データと、同時期の生活跡遺跡の集成を行った。福島・栃木・群馬県内でも再葬墓と生活跡とを一連の遺跡群として理解できる実例がある。ただし、再葬墓の場合、造営過程の具体的な復原を可能とする調査例はきわめて少なく、好例も調査報告データに不備があるなど、かなりの困難を伴うことは確かである。
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