有機質を素材とする防禦具のなかで、近年、出土例が増加した木製短甲には、大別して、刳り抜いた素材を用いるもの(刳り抜き型)と比較的小形の板材を綴じ合わせるもの(綴り合わせ型)の2種がある。現在のところ、前者は主として古墳時代に、後者は主として弥生時代に見られる。樹種が判明しているものは、いずれも広葉樹を用いているが、厚さに着目すると、綴じ合わせ型は数mmのものが大半であるのに対し、刳り抜き型は、平均すると、その2〜4倍の厚さがある。厚さの差は、綴じ合わせと刳り抜きという製作方法も関係するが、厚いほど防禦性は高くなる。これに鉄製短甲を加えて防禦具の変遷を検討すると、古墳時代における鉄鏃の普遍化、長頸鏃の出現といった攻撃用武器の変遷と対応してくる可能性を指摘することができるであろう。また、盾に木製と革製漆塗があるが、これも、弓矢の威力と関係してくるものである。 一方、主要な攻撃用武器の弓矢については、矢の先端である鏃は資料的に豊富であるとはいうものの、他の有機質の部分については、遺存例が乏しく、また、当初の形態を保っている例が皆無に等しいといっても過言ではない。矢については、矢柄の長さが80cm前後と60〜70cm前後の長短2種類あり、矢羽根については、2〜4枚の各種の存在が知られている程度である。矢の長さは、弓矢の扱い方や携帯方法とも関係すると考えられ、それは戦闘形態にも影響してくるものであろう。 今年度製作した復原弓矢を用いて攻撃力、防禦力の有効性と限界に関するデータを収集することにより、武器・武具の変遷が明確になると考えられる。
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