本年度には主として集落構造関係の資料を収集した。各地の遺跡の報告書から、本研究の目的に必要な情報を網羅的に収集した。特に研究上重要な資料については、所蔵・保管先に直接出向いて、実測図作成・写真撮影などの手段で記録化した。人間集団編成とその集落における空間的レイアウトを研究対象とする諸学、すなわち文化人類学・民族学・民族建築学などにおける研究の成果を、事例研究は当然として、特に方法論のレベルで勉強・摂取するために、基礎的文献・論文等を日本語・外国語を問わず広く複写集成して学習した。平成9〜11年度に行った作業の補足を行った。 本年度に収集した資料に基づいて、集落構造に反映された人間集団の編成原理の変化とその原因についての分析を開始した。階層化がもっとも早く進行したとの説もある北部九州においても、集落内でそれを裏付ける様相は顕著にならない。床面積が大きな高床建物は首長の居所ではなく、かといって近年声高に主張されている神殿建築でもなく、集会や共同祭祀などの公共機能を果たした場と見るべきである。また倉庫も集団全体に帰属し、共同管理を受けたという形から逸脱することはない。以上の所見は、本研究による祭祀・墓地構造の分析結果とも合致する。もちろん首長の政治的成長は進行していたが、見かけ上の共同性の強化の裏でしか進行させえなかったことが如実にわかる。 本年度で研究計画が終了するため、以上に述べた12年度の成果に加えて、既報告の9〜11年度の成果も総合して、1年以内に取りまとめをおこなう。
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