弥生時代から鎌倉時代に至る10数個所の遺跡から出土した約150点にのぼるガラス玉類の化学分析を実施した。またこれらの資料から保存状態の良好な資料を選別してX線透過撮影およびX線CTをもちいた構造調査を実施した。さらに鉛同位体比の測定をおこない原料鉱石および製造産地に関する情報の検討をおこなった。 材質調査の結果、弥生時代と古墳時代における変遷期にはガラス材質が大きく変化することも裏付けられ、さらに今回の調査によって古墳時代の後期あたりから従来知られていなかった、混合アルカリガラスが流通していたことも明らかになった。古墳時代は酸化アルミニウム含有量の多いソーダ石灰ガラスが多量に流通しており、これら両者のガラスは、その起源がインドあるいは東南アジアに推定されており、古墳時代は国際色豊かな遺物が日本に流入していたとも考えられる。 ガラスの加工方法に関しては、弥生時代におけるガラス材質と加工法がしだいに明らかになりつつある。今回の調査で大きな成果となった一つには青色カリガラスで造られた管玉で、山陰地方から北陸あたりに出土している遺物の多くは穿孔されていることが明らかになってきた。これらは九州地方には発見されておらず、ガラスの流通を論じる上では極めて重要な情報となる。 鉛同位体比による調査は、弥生時代のカリガラスと中世におけるカリウム鉛ガラスについて実施した。カリガラスは従来から製造地に関しては諸説があったが、今回の調査ではほぼ中国で製造されたものが日本に持ち込まれたことが明らかになった。いっぽう、中世におけるカリウム鉛ガラスは中国産と日本産が存在しており、吹きガラスで製造されたものは中国産で玉類は日本産の原料が使用されたことが明らかになった。
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