本研究は光学的手法をもちいて、古代ガラスの加工法や材質を明らかにするものである。 (1) ガラス管玉や勾玉、小玉などの加工方法を調べるため、本研究では日本で初めての試みとして高エネルギーX線CTによる内部構造の調査をおこなった。また、小玉など簡単な構造の遺物は、従来のX線透過写真法と画像処理を組み合わせて調査をおこなった。その結果、弥生時代に流通したカリガラスで作られた管玉は穿孔されていることが明らかになった。そして、これらの遺物は主として福井県、京都府北部、鳥取県、島根県など北陸から山陰地方に分布し、九州には分布していないことが明らかとなった。一方、同じ弥生時代に流通した鉛バリウムガラスで作られた管玉は溶融法により作られており、カリガラスの管玉とは加工技法が異なることが明らかである。 (2) ガラス材質は、弥生時代には鉛バリウムガラス、カリガラスが主なもので、弥生時代の後期後半から古墳時代の初頭にかけてソーダ石灰ガラスが出現し、古墳時代はソーダ石灰ガラスの時代となる。日本で流通したソーダ石灰ガラスは酸化アルミニウム含有量など2種類のタイプがある。古墳時代には多彩な色調のガラスが出現すると言われているが、これは酸化アルミニウム含有量の多いソーダ石灰ガラスによってもたらされた。研究を進めて行く上で、これらの現象はすでに北部九州では弥生時代の後期頃から見られることが明らかになってきた。また、本研究では古墳時代の遺跡から混合アルカリガラスも新たに発見され、どの地域から伝えられたのか詳しく調べて行くことも必要となった。
|