平成9年度からシボ語の文法体系を明らかにするために、研究協力者の承志氏に、多くの用例を作ってもらい、その用例について、一つ一つ文法要素がどういう関係に成っているのかを、分析していった。平成9年度の終わりになると、文法体系の大きな骨格ができあがった。そこで、ウイグル語との比較を行ってみたが、ウイグル語の文法の記述方法が大幅に違っていたために、この作業は大きな成果を生み出さなかった。この作業については別の機会に完成させる必要がある。 続いて、シボ語の助詞についての分析を行った。体系としては日本語に似ているが、未だ助詞化していない名詞・副詞も多く、「後置詞」という品詞を作る必要があることが分かった手。平成10年度後半から、平成11年度にかけては、もっとも重要な、動詞の分析を行った。この分析を通じて、シボ語の文法の特徴が明らかになった。 たとえば、シボ語には[vem]という接辞があるが、これは自動詞に付くと、他動詞を作り、他動詞に付くと、使役動詞を作る場合と受身動詞を作る場合とがある。つまり、この[vem]という接辞は、他動詞語尾であり、使役動詞語尾であり、受身動詞語尾であることが分かる。こういう現象は、古代日本語の助動詞の働きを彷彿とさせるものである。 最終的には、日本ではじめてのシボ語(満州語口語)の文法書を作成した。これは日本語文法の枠を応用し、日本語文法と平行的に記述できるようにしてある。
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