密参録は、参禅者に対して出す課題とそれに対する解答法を記したもので、課題を多く『碧巌録』 『臨済録』『無門関』から取り、ゾ体やソロ体の抄物文体で書いてあるので、抄物の一種として言語研究資料として利用し得るものである。本研究は、語学資料としての抄物の研究の一環として、密参録を発掘・整備し、目録を作成して、日本語研究資料としての有効性を明らかにしようとしたものである。 1、 発掘・整備と目録作成 既調査の松ケ岡文庫・花園大学・国会図書館・内閣文庫・寿岳章子氏など所蔵の密参録に加えて、お茶の水図書館所蔵の『古則草紙』をはじめとする密参録、龍門文庫所蔵の『句双紙』書入れ、京都大学総合人間学部所蔵の密参録等を発掘し、約100点の密参録の目録を完成することができた。時代から見ると、室町時代文明年間成立のものが最も古く、江戸時代寛文・延宝年間にまで続いている。作成者の法統から見ると、大応派大徳寺系(春浦宗煕・龍嶽宗劉・沢庵宗彭・江雲宗龍等)のものが中心をなしており、ほかに大応派妙心寺系、幻住派聖福寺系(頤仲碩養等)、同円覚寺系(古帆周信等)のものがある。 2、 日本詔研究資料としての有効性 鈴木大拙博士が禅学の立場から早く注目し、金田弘博士が松ケ岡文庫の資料を紹介したほかには研究が進んでいなかった。禅の問答であるため、本文の解読が厄介であるが、生きのよい問答を記録した資料もあり、深く試み込んでいくと、禅籍抄物の周辺資料として、主として語詞研究資料として有効に活用することができるものと見られる。
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