本年度は、6月博多、青森、7月鹿児島、宮崎、8月旭川、札幌、函館、9月青森、那覇、等と、各地の旧遊廓関係の残存文書を中心に資料調査を行った。殊に鹿児島における調査においては、南島資料関係の民俗関係の売春資料に注目すべき物があった。又、函館における調査においては、江戸時代後期から明治初期(北海道開拓時)にかけての売春関係資料に注目すべき物があり、両者間において、所謂、大和型遊廓と南方系遊廓の相違点を見出し得たことは大きな収穫であった。前者の近代的性格が性の商品化と人間性の無視を助長して行ったことは、後者の土着的売春形態との比較によってなおいっそう明らかになった。12月からは、補助員を使用して、文献関係の資料整理を行った。整理の基軸には大和型と南方型遊廓の相違点に着目、留意した。 遊廓史と文学・芸能との関係調査においても、各地方史における成果を文献目録作成に十分に組み込めるような配慮をした。上記における現地調査(本年度の重点は東北・北海道・九州・沖縄)において、各県立図書館・文書館、市町村図書館の郷土関係資料注目し、網羅的な調査を行った。又、一方においては、江戸時代における演劇・小説における遊廓関連調査を行ったが、この点においては、膨大な作品群を絞り切れず、次年度に課題を残したが、地方案内誌や地方細見などの残存実態を数多く確認できたことは収穫であった。 民俗関連調査においては、遊女の墓の存在を中心に調査を行い、未だ知られていなかった多くの墓の存在を確認するなどの効果を上げることが出来た。又遊廓における年中行事などについても、現地における聞き取りなどによって、従来指摘されていたような、地域住民との隔離的遊廓形成とは異なった、地域住民との一体的な性格を見出すことが出来た。
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