1. 西鶴の営為と出版環境の相関について、 『日本永代蔵』の出版について、『金銀万能丸』の出版と関連して、書肆森田庄太郎と京都の出版書体との提携の問題の具体的なあり方について論じた。西鶴の主体的なあり方のみから『日本永代蔵』の創作と成立を論じるのではなく、当時の作者・書肆、それも大坂と京都という異なった地域の書肆相互の関係の上から考究する必要性があるとした。『日本永代蔵』は京都の書肆の提言を受けて、巻五・六が追加されたが、その為に出版までに二年の時日を要したのであった。 2. 書本屋と絵巻の出版について、 武庫川女子大学蔵の奈良絵本『変化物語』の成立過程について、その女子教訓的な内容を含めて、特装本としての具体相を検討し、京都の書肆の手になること、またその注文・購入等は江戸の大名を含めた武家階層であることを論じた。 3. 藤井懶斎ついて 藤井懶斎の著作を中心に諸本の調査を継続し、その受容と影響について考察している。
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