1. 本研究では、江戸(東京)に墓所の存在する近世学芸家について、調査、収集した墓所、碑文資料に基づき、墓所や碑文の情報を整理、集成した仮称「江戸学芸家墓碑録」の作成に備えるため、「江戸学芸家墓所索引」の作成と、それと併行して墓所の実地踏査を行った。 2. 「江戸学芸家墓所索引」は、まず近世の墓碑文資料としてはもっとも詳細な五弓久文編『事実文編』と原念斎編『史氏備考』という二つの資料をもとに、該当する近世学芸家約二千名を抽出し、ついで旧来の江戸(東京)の掃苔録を集大成した観のある藤波和子編『東京掃苔録』により、戦前昭和十年代における墓所の地点、寺院名を確認、さらに『国史大辞典』『国書人名辞典』等によって現時点での墓所の有無を確認して作成した。また本索引の各項目は、人名、地点(市名あるいは区名、町名)、資料名からなり、人名の五十音順と地点別の二通りの排列とした。 3. 東京都台東区の下谷地区を中心とする約20ヶ寺について、墓所の地点、墓石の現況、碑文の有無に関する実地踏査を行った。調査の具体的方法は、墓石の実見記録、住職等からの聞き取りおよび写真撮影等による。ただし、碑文の判読は、非常な困難を伴うため、その記録や照合は見送らざるを得なかった。また時間的な制約から、予定していた寺院数を大幅に下回るなど、予想できたこととは言え、実地踏査には多くの課題が残ったので、今後の宿題としたい。
|