研究計画に従って、資料の収集、分析を行うとともに研究のとりまとめを中心として、作業をすすめた。(1)30年代の前衛芸術に関する期刊資料『芸苑』『美周』『芸術旬刊』『芸術旬刊』『美術雑誌』『上海芸術月刊』等の複写、整理。(2)民国時期の大衆芸術に関する基本的資料『良友画報』『時代画報』呉昊等著『都会摩登一月〓牌』(香港三聯書店1994)香港市政局『晩清中国外鎖画』1982等の購入、複写 整理(3)民国時期の民間芸術に関する基本的資料『民俗、民間文学影印資料』『中国民間木刻版画』『中国民間剪紙』等の購入、複写、整理。 以上の作業によって30年代上海を中心とする広告等の大衆芸術の情況、また民間芸術の研究概況とモダニズム運動の関りの一部が明らかとなった。しかしこれは、あくまでも一部の情況が明らかになったにすぎない。全体像の把握には、さらなる研究の持続が大切である。一年間の研究を通じて、30年代の芸術情況は、大衆芸術、民間芸術、前衛的芸術、アカデミックな芸術のそれぞれが対立しながら林立していくということが明らかとなってきた。他方現在は、70年代末以来の文草中のマオイスト・モデルの遺留から、前衛芸術の出現、さらに80年代のアカデミックアート、90年代の大衆芸術の台頭というふうに順をおって入れ変わることが、明確となった。30年代と70年代以降の現象は、一方で類似性を見せながらも、林立と順化という対比をあらわす。この相異が起因するものは何か、という新たな研究課題が浮上してきた。今後も作業を継続し、革命の前と後という社会情況をも研究の視野に入れていく必要がある。そして細部にわたる事実を検討、整理していかなければならない。すでに公表した論文等は別の項にまとめたが、資料の分析については、現在準備中の論文で公表を計りたい。 (尚本研究については 中国のキュレイタ-黄篤氏にレビューを受けた)
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