戦前期台湾の有力な日本語作家である揚逵・張文環・呂赫若・周金波・王昶雄らは1920年代から40年代にかけて東京留学を体験している。本研究は戦前期台湾文学の形成を、読書市場に関する先行研究を踏まえつつ、有力作家たちの東京留学体験を系譜的に考察することを目的とする。このために本年度は主に以下の研究調査を行った。 (1)先行研究の調査・整理 島田謹二『華麗島文学志--日本詩人の台湾体験』、尾崎秀樹『近代文学の傷痕』、下村作次郎『文学で読む台湾』、岡崎郁子『台湾文学--異端の系譜』、垂水千恵『台湾の日本語文学--日本統治時代の作家たち』、中島利郎・黄英哲ほか編『よみがえる台湾文学--日本統治期の作家と作品』、河原功『台湾新文学運動の展開--日本文学との接点』など関連する主要研究書を調査し日本における当該研究史をまとめ、その成果の一部は雑誌『東方』に発表する予定である。 (2)台湾人作家の東京留学体験をめぐる調査 揚逵・張文環・呂赫若の三作家をめぐり、以下の四点について調査整理を行った。 (1)留学以前の読書体験 (2)留学中の学歴・職歴 (3)留学中の東京の文壇・文化芸術界との交流状況 (4)留学中の作品に関する書誌学的研究
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