研究概要 |
平成10年度にはこれまでの台湾文学研究を整理するいっぽうで、戦前期作家の東京留学体験に関する系譜的研究を進めた。前者の成果としては抽著『台湾文学この百年』(東方書店)および抽稿「文学」(共著『もっと知りたい台湾 第2版』弘文堂)の執筆・刊行がある。 台湾文学とは何か?二〇世紀の台湾における文章表現と読書とは初期においては一〇パーセント程度の人が解する古典中国語で行われ、やがて日本語がこれを駆逐し、そして戦後は北京語に改められた。いずれの時代も言文不一致であることに変わりはない。その文章表現の中には官報や本国から移入された小説に至るまで大日本帝国や中華民国のイデオロギーに直結したものも膨大な量にのぼることであろう。しかし日本語にせよ北京語にせよ、あるテクストが台湾大の共同体意識、あるいは台湾ナショナリズムという価値判断との関わりを有するとき、それは台湾文学と呼びうると私は考えている。あるテクストが共同体意識やナショナリズムというイデオロギーとのコンテクストで読まれるとき、それもまた台湾文学の範疇に位置していると考えられるのである。 六月には日本台湾学会が創設され,報告者は理事の一人に選出される。報告者は平成11年度大会に向け,戦前期台湾文学研究のシンポジウム二種の企画責任者として活動した。
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