1. 平成10年度の実施目標 本研究は文化大革命期(1966-76年)の文学活動の実態を明らかにし、「文革期文学研究」という新しい研究領域の確立を目指し、その前提となる資料整備をおこなうものである。平成10年度は、(1)基礎資料の調査と分析、(2)資料整理とデータ・ベース化、(3)中国出張、(4)成果の発表、を実施計画として掲げた。このうち(4)は結局実現しなかった。これは主として私が平成10年4月より言語文化部長に選任され、部局長としての仕事に忙殺されたためである。 2. 計画の実施状況 (1)文革期の「人民日報」CD-ROM版、貴重本である「解放軍文芸」(76年度版)をはじめ文革末期の学報など雑誌16タイトル119冊を新たに収集、調査した。(2)9年度に整理した「朝霞」雑誌の作品名・人名索引入力が完了した。また上海を中心とする詩と小説の執筆者索引も現在入力中である。(3)7月末から8月初中国社会科学院文学研究所を訪問、劉福春研究員、北京大学李揚教授ら文革期文学研究者と面談・交流した。文革期文学研究の必要性と可能性について認識を共にした。劉研究員からは文革期詩歌の共同研究の申入れがあった。 3. 成果 文革期文学(特に詩歌の方面)研究のための基礎固めができた。収集した資料を利用しての実証的文革期文学研究の展開が可能になるはずである。また中国ではこの研究はまだタブーであるが、今後共同研究を通じて研究の進展が期待できる。平成11年度は資料集(「紅衛兵詩歌集」「朝霞索引」「文革期上海文壇資料」など)を刊行し、さらに文革期文学史のまとめを報告書として刊行したい。
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