英文学研究における「近代」の言説の意識的あるいは無意識的な機能に関する昨年度の研究成果に基づき、最終年度である本年度は、特殊「日本的」と思われる「近代」の言説の振る舞いと、それが機能する枠組みについて考察を進めた。日本的「近代」の言説(以下「日近言」)と西洋的「近代」の言説(以下「西近言」)との関係は、以下のように、おおよそ3類型に分類することが可能である。(1)普遍的プロジェクト:「日近言」と「西近言」とは本質的に同様のものであるとする立場。(2)批判的共通論:「日近言」と「西近言」とは、研究という特殊近代的で自己反省的な学問的言説に関する限り、大筋において重なるとする立場。(3)差異論的プロジェクト:「日近言」と「西近言」とは、根本的には異なるが、理論的比較検討や考究を妨げるものではないとする立場。本研究は、第三の立場を採択し、その具体的例として、カール・レーヴイットと日本の近代の問題を取り上げた。その成果は研究報告書として添付した。
|