“Economy and Chain Uniformity"では、次のような多重wh疑問文(multiple wh-question)や超操り上げ構文(super raising construction)の文法性の説明について経済性の観点から代案を提示した。 (1)^*How do you wonder which problem to solve? (2)^?Which problem do you wonder how to solve? (3)^*John seems that it was told that mary loved Bill. 先ず、連鎖連結の等質性(uniformity)をtheta関係とL関係に拠って定義する。そして、経済性の原理として、「結果が同じであるならば、余計なことはしてはならない」という原理を設定する。これらから、(1)、(3)では最小連結条件(MLC)を破る移動の適用は許されないが、(2)では許されるということが自動的に導かれ、それぞれの文法性が説明される、と論じた。 “Economy and Minimality"では、先ず、経済性の概念を、科学哲学レベルにおける一般的な経済性と、個別科学としての言語学特有の経済性の概念・原理の二つに分け、特に実在論の立場から、それぞれを区別することが重要であることを論じた。次に、経済性の原理に関する局所性(locality)と大域性(globality)の概念を厳密に定義した。そして、これまでに提案されている大域的経済性条件の一つについてそれに替わる局所的経済性条件を提案し、また、引用文倒置構文(quotative inversion)や場所句倒置構文(locative inversion)に関する局所的経済性条件支持の議論の不備を指摘した。さらに、経済性条件の大域性の意味、計算上の複雑さ(computational complexity)、及び、局所性について総合的な考察を加え、今後の可能性について示唆を行なった。
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