本研究課題のひとつ「ブロンテ書簡研究」については、鳥取大学教育地域科学部紀要に2回にわたって、1842年および1843年の期間に書かれた書簡を翻訳し訳注を施し掲載した。この間にシャーロットとエミリーがブリュッセルに留学し、大陸での経験は特にシャーロットの後の小説作品の大きな題材になる重要な時期である。 もうひとつの課題である「ブロンテ初期作品研究」に関しては、昨年度の研究書『ブロンテ初期作品の世界』(単著)に続き、本年10月には監訳『秘密・呪い---シャーロット・ブロンテ初期作品集I』(鷹書房弓プレス)を出版した。本邦初訳であり、2000年10月に予定している続編『シャーロット・ブロンテ初期作品集II』が出版されれば、みすず書房の『ブロンテ全集』版の『アングリア物語』(1997年)と合わせ、ブロンテ初期作品のかなりの部分の邦訳がそろい、今後の研究に資すること大と思われる。現在、第II巻の分担作品の翻訳および全体の編集作業を進めている。 その他、学会での活動としては、「日本ブロンテ協会1999年大会」(平成11年10月16日、於:獨協大学)において、シンポジウム「作家と初期作品---ジェイン・オースティンとシャーロット・ブロンテ」のパネラーとして、ブロンテ初期作品の成立過程から、物語世界の特徴、語りの手法などについて話した。
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