前年に続き、ヘンリー・ソローの後期作品、『メインの森』、『エクスカーション』、『月』(ソローの日記の抜粋集)等を研究対象とし、19世紀前半から中頃における合衆国の文化啓蒙活動(ライシーアム)と各作品の関わりをさらに調査し、その成果を論文化した。『メインの森』では、特にその第1話「クタードン登山記」に焦点を絞り、ソローが行なったメインの原生林地帯探査の際のメモと、それを彼がコンコード・ライシーアムで講演した際の原稿、並びに実際に作品化したものの三者を比較、検討した。次に、この作品の成立過程についての成果を論文化した。日本ソロー学会の会誌に掲載決定。作品『エクスカーション』では、「ウオーキング」というエッセイ中に含まれたソローの詩「旧マルボロー街道」について、ソローの講演との関連のことを昨年度検討し、論文化したが、今年度は、この詩とソローの代表作『ウオールデン』との関わりを再検討して論旨を修正し、英文の論文にした。日本ソロー学会編の英文論文集(2000年発行予定、筆者はその副編集長の任務にある)に掲載予定。 その他、ソローのネイチャー・ライティングの作品の中で特に『月』を対象にし、当時の天文学についてのソローの知識や関心と彼の自然観・人生観との結びつきを検討した。さらに、ソローと関係の深い20世紀の自然作家ジョン・ミューアの作品『はじめてのシエラの夏』にも取り組み、ヨセミテ山域についての自然描写の特徴とミューア独自の信仰的な自然観、並びにソローと共通した人生観等の研究を行なった。さらにこの作品の解説記事の執筆を行なった。
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