研究概要 |
18世紀は,フランスをはじめとする大陸思想の影響を強く受けながら,イギリスでも女性と学問,読書,会話などの問題が大きく取り上げられ始める時期である。本研究は、この時期のジャーナリズムを中心に,文学作品をはじめ社会思想や自然科学などさまざまな分野の著作の中から女性に関する議論を収集し,近代初期の女性論の大きな流れをつかむことをねらいとしている。本年度はとくに17世紀末の新聞『アシ-ニアン・マ-キュリー』と女性思想家メアリ-・アステルを中心に研究を進めた。『アシ-ニアン・マ-キュリー』はジョン・ダントンによって週2回刊行されていたQ&A形式の新聞である。この新聞はイギリスの文芸雑誌・新聞の草分けとされ,有名な『タトラ-』や『スペクテーター』の先駆とも言われている。ダントンは,大学教育などを受けられない一般の人々のためにも知識を広く普及させることをめざしていた。当時女性たちは大学教育を受けることができなかったので,多くの女性がこの新聞に投書し,宗教,自然科学,社会制度などに関する質問をして,知的好奇心を満足させたり,学ぶことへの希望を与えられたりしている。この研究の結果,The Athenian Mercuryは女性の学問を積極的に支援しようとしていたことが明らかになった。The Athenian Mercuryに関しては、欧米でもまだあまりまとまった研究がなく,さらに研究を深めたいと考えている。また18世紀初期に女性のための大学教育を構想していたメアリ-・アステルに関しても,近く研究成果をまとめる予定である。
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