ペトルス・ラムスはイギリスの三人の大詩人に影響を及ぼしたといわれる、フィリップ・シドニーとクリストファー・マーロウとジョン・ミルトンである。ミルトンは浩瀚なラムス論理学の教科書を書き、マーロウは『パリの大虐殺』にラムスを登場させた。シドニーは直接ラムスに会ったことがあると思われるのに、一言の言及もない。 革命的な思想が外国の文学に影響を与えるのには相当な時間がかかるものだ。シドニーは、依然として伝統的思考方法に縛られていたが、マーロウは、ラムス論理学の中心的メッセイジが、二分法的思考と、artificial vs. inartificial argumentsの区別であることを的確に把握した。それが詩作の内部にまで滲透してくるのには、ミルトンを待たなければならなかった。 しかし、ミルトンの思想のなかには、新しい傾向だけでなく、ロバート・フラッドに代表されるカバラ主義・ヘルメス主義の要素も見出される。しかし最近の研究では、教会の正統主義より、かかる要素こそ、聖書原典に近く、ミルトンの努力は、「泉に向かって」を標榜するルネッサンスの思想に忠実であったのだ。
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