研究概要 |
今年度は女性性がいかに構築されたかに的を絞り、当時の男性支配による文化のなかで創り出された女性のイメージが小説や雑誌においてどのように表象されているかを考察するために、主として以下を研究課題とした 1.文献収集:18世紀英国女性の状況に関する資料。 主に雑誌(Gentleman's Magazine,The Spectator,The Tacler)・評論・医学書などの文献コピーを収集し、さらに、女性性に関する記述箇所の抜粋及びカード化を行った。 2.ジャーナリスティックなものや小説に表象された女性性の分析。 (1)女性の劣性を唱える当時の社会思潮を雑誌などから分析。 (2)リチャードソンのPamelaとフィールディングのTom Jonesのヒロインに表わされた女性性の分析。 以上の結果から次のような研究成果を得た。当時の女性性は家父長制度の下で構築されたジェンダーを基にし、男性より身体的、精神的劣性であるが故に服従する者と規定されていた。「男らしさ」は行動力や決断力などを、「女らしさ」は可愛らしさやおとなしさなどを表した。しかし、女性は男性にとって従属的で性的対象物であるとする根強い価値観のなかで、社会的存在としての女性に変化が起きていた。一つは女性の識字率の上昇とそれに伴う女性向け雑誌の増大。二つ目は稀少ながら女性作家の出現。三つ目は財産より愛を主張する新しい結婚観への支持である。だが、当時大人気を博したGentleman's Magazineでも女性の投票権取得に意義を唱えたり、学問をめざす女性を攻撃する記事が多く、リチャードソンやフィールディングのヒロインたちも自分の結婚観を主張したが、特に性と母性について男性社会が創り出したイメージを体現していたと言えよう。
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