交付申請書において具体的テーマとして示した1)中世文学作品と年代記の間に見られる類似性についての実証的研究の一つとして、申請者のライフワークである「狐物語」と十五世紀の年代記作者を代表するジョルジュ・シャトラン、マチュー・デクーシ、オリヴィエ・ド・ラ=マルシュの記述との比較検討より得た成果の一部をまとめて、国際動物叙事詩学会並びに日本フランス語・フランス文学会において口頭発表し、それに加筆修正を施した上で本学論集に発表している。文学と歴史学の中間に位置するとも云える年代記に関しての語学、文学、文献学的観点からの多角的考察と今後も進め今までほとんど顧みられることの少なかったこの分野の研究に諸外国に先んじて先鞭をつけたいと願っている。2)年代記を中心とした個人言語の性格と文体論的特性に関しては、従来より注目していたジャンヌ・ダルクの言語を取り上げた。ジャンヌ・ダルクに関する研究の中でも言語に関する考察はほとんどなく大いにやりがいのあるテーマであると各方面より注目を浴びた。現在までにジャンヌ・ダルクが残した書簡の文体的特色についての考察を終了し、日本文体論学会で口頭発表の上、同学会機関誌に論文を発表している。当研究はオルレアン市立ジャンヌ・ダルク研究所の協力を仰いで更に各分野に展開中である。
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