今年度行った研究は以下のとおりである。 1.映画研究 「ドイツ映画の過去・現在・未来」において、ドイツ映画の草創期から現在に至る作品を分析し、ドイツ映画の特徴について考察した。また、千葉大学公開講座「映像化された文学」において、ギュンター・グラス「ブリキの太鼓」「女ねずみ」を取り上げ、映文学と映像、ドイツとポーランドの歴史、「声をあげるという文化」について論じた。千葉大学の生涯学習プログラム「けやき倶楽部」において「戦時下の表現」と題する講演を行い、亀井文夫の「上海」「戦ふ兵隊」の映像とテクストを分析し、プロパガンダと抵抗の可能性について検討した。これら亀井の作品は、ベンヤミンの「芸術の政治化」のひとつのあり方を示すものとして重要であり、現在論文を執筆中である。 2.ジェンダー研究 ケイト・ミレット『性の政治学』において、近代の家族思想や政治思想、文学における女性イメージが、女性をいかに「美化」しつつ区別し支配する力に満ちているかを考察した。マルガレーテ・ブーパー=ノイマン『カフカの恋人ミレナ』においては、ナチズムとスターリニズムの強制収容所を生きた女性たちを通して20世紀の問題を論じた。また、19世紀半ばのルイーゼ・オットーの新聞・小説における女性像を分析し、ドイツ国民国家形成期に、女性の解放と連帯を訴えるテクストの中に、いかに強力に女性をジェンダー化し国民化する力が働いているか、gendered Nationの形成に女性の側からもいかに自発的に参加していったかを研究した。 3.ベンヤミン研究 ベンヤミンにおける「芸術の政治化」、大衆による受容、歴史歴史認識について研究した。
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