1.ベンヤミン研究 (1)「物語」と「メルヘン」の意味-神話、メルヘン、物語等、ジャンルの意味を整理し、現代のアニメや子ども向けテレビ番組と比較した。現代のメディアの中の「お話」の基本構造を見ると、かつてのメルヘンと共通するところが多く、いわば、魔法のかわりにテクノロジーを使ったメルヘンという趣を呈している。しかし、そこで決定的に欠落しているのが、声による語り、目や手、息づかいによる共同作業としての「語り」である。しかし、このような「語り」を回復しようとする欲求と力を、実は子どもたち自身、本来もっている。(2)「弁証法的イメージ」としての過去の像-「生きている者」の想起の力を喚起する歴史概念として、それも、圧倒的な敗者、倒れ伏した者の救済を目指すイメージとして考察した. 2.20世紀イメージ研究 (1)物のフェティッシュ化と女性のフェティッシュ化のプロセス-アール・ヌーヴォーからアール・デコへと至る物の「かたち」に「フェティッシユ」化の流れを見い出したが、他方、それと並行して進行しつつあった女性の「フェティッシュ」化の流れを女の顔の変化に注目して分析した。(2)gendered Nation-19世紀半ば以降のルイーゼ・オットーの新聞・小説における女性像を分析し、ドイツ国民国家形成期に、女性の解放と連携を訴えるテクストの中に、以下に強力に女性をジェンダー化し国民化する力が働いているか、gendered nationの形成に女性の側からもいかに自発的に参加していったか、それは20世紀においてどのように展開したかを考察した。(3)戦時総動員俸制下のプロバガンダと抵抗-日本とドイツの1930〜40年代のプロバガンダについて研究し、大衆の無意識を集団へと収斂させていく時の心情、論理、技法が、日本とドイツ、さらにはアメリカにおいては大きな違いがあること、また、作品を細部にわたって見ていくと、ブロパガンダ映画や雑誌の中にも、公式的扇動からすり抜けていく感情の流露や抵抗、サポタージュなどが含まれていることが分かった.
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