研究概要 |
本研究の目的は、近世以降のドイツ語において、複雑な情報を簡潔で正確に伝達するいう目的のために、複合文を形成する接続詞の体系が中世期以降どのように組み替えられ、意味的、機能的に分化、整備されてきたかを究明することであるが、平成11年度は次のような作業を行い、以下のような知見が得られた: 1)昨年度に引き続き、15世紀のテクストの代表例として、ニュルンベルクで出版されたイソップ寓話のドイツ語訳テクスト、16世紀のテクストの代表例としてルターの著作を選定し、接続詞を含む複合文を収集し、データベースの充実を図った。 2)収集した複合文を接続詞の機能によって分類し、そのうち接続詞daBの分析を行った。 3)接続詞daBの用法は現代ドイツ語では形態統語的に明確なものに限られるが、近世ドイツ語ではコンテクストに頼る用法が多かったことを実証し、これは現代語がコンテクストに依存せず、すべての情報を言語的に明示するという書き言葉的性格を強めたことによるとの知見を得て、論文にまとめ、エネルゲイア誌に発表した。 4)2000年2月19-21日、関西大学文学部独文科高田博行教授を訪問、近世ドイツ語に関する情報を交換し、同大学図書館で資料収集した。 5)2000年3月13-22日、ドイツに出張。14-16日、マンハイム市ドイツ語研究所の年次学会に出席、ドイツ語語彙形成に関する研究発表を聴講した。17-20日、ボン大学にWener Besch,Johannes Erben,Walter Hoffmann教授を訪問、近世ドイツ語の研究文献に関する指導を受けた。
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