1)キリスト教の歴史のなかで、『聖書』の記述がいかに解釈され、それとともにデモノロジーが形成されてゆく過程を解釈学との関連において追求した。『聖書』を書いたのが「父なる神」であるとすれば、それを解釈したいったのは、アウグスティヌスらの教父であった。そしてトマス・アクィナスらのスコラ哲学者たちはいわば「継父」であった。これら継父たちによって西欧の人々のあいだにデモノロジーが浸透していった。こうした観点の下に、「歴史と継父」という論文を目下執筆中である。 2)西欧の中世においてデモノロジーが確立されていったとき、最初のファウスト文学というべき『テオフィロスの芝居』が書かれた。この世で出世する見込みが断たれてしまったとき、テオフィロスは思わず悪魔と契約してしまった。その後、テオフィロスは悪魔と契約したことを後悔する。そのテオフィロスを救ったのはマリアであった。西欧中世の人たちがサタンやルチファーの存在をいかに捉えていたか、また悪魔やデ-モンの強大な力から逃れるためにいかにマリアの存在を必要としたかを、この芝居の中に探った。 3)もともと日本には鬼はいても悪魔はいなかった。ところが近年、悪魔や「悪魔との契約」が日本の少年少女たちを魅了しつつある。それは手塚治虫の『ネオファウスト』や『MW』、永井豪の『デビルマン』といった漫画の中に如実に描かれている。本来、日本にはなかったはずのデモノロジーがどうしてサブカルチャーの世界に現れたのか、そして最近、次々と起きている少年犯罪や少女たちの援助交際は、こうした日本版のデモノロジーといかなる関係にあるのかを考察している。
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