本研究は、19世紀後半以降の文化的モデルネの運動の一つである芸術上のモダニズムと「ナショナルなもの」との関連を探ることを主眼としている。本年度は、研究期間の最終年度に当たるので、これまで収集した第一次資料、第二次資料を 1)ドイツの世紀転換期、とりわけ「ドイツ帝国」成立後における「文化」と政治の状況 2)ドイツ語圏における文化的モデルネの展開の特徴 3)産業資本主義における「文化」領域の占める位置等の論点に従って、整理を行い、文章化に取り組んだ。 他方本年度は特に日本におけるモダニズムを探るため、とりわけ「建築」の分野でのその流入と展開を見た。とりわけ東京帝国大学の建築学科の辰野金吾研究室とその卒業生の足跡をみることを中心に文献渉猟を行った。前川国男や丹下健三といった建築家に加え、夭逝した立原道造についても検討を行った。日本のモダニズムの検討について、その端緒を得られたことは、この研究を今後も進める上で貴重な体験であった。
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