研究概要 |
文法家という1個人が統語論(語順論と構文論)に関して提示した「言語の理論態」が超個人的な「言語の経験態」を反映していたのか,それとも文法家たちが自らの語感ないし印象によってそれぞれ規則を提示にすぎないのかを究極には明かにする目的で,平成9年度はまず18世紀のドイツ語文法の集大成をなしたとされるア-デルング(1781年)の統語論の「理論態」について調査を行った。その結果,ア-デルングは次のような一般的文法的・規範的な基礎的認識に基づいて文構造を分析したことがわかった;1.文は自立的な概念と,それを説明するための非自立的な概念とを結びつけることで成立する;2.文では主語となる名詞が中心であり,述語は名詞の概念を説明する規定成分である;3.支配する語が支配される語に先行するので,主語が述語に先行し,述語としての定動詞が目的語や副詞成分に先行する。 平成10年度の課題としては,「理論態」についての調査を,ア-デルング以前にも広げ,文法家による文法観と文章観の違いや,規範性と記述性の程度の差が存在していないかどうかを探ることである。なお,平成10年10月に開催される日本独文学会秋季研究発表会では研究代表者の高田と研究分担者の湯浅の両名が,「H.パウル以前のドイツ語文法-文法の知的パラダイムの転換と展開」(仮題)をテーマとするシンポジウムで,18世紀のドイツ語統語論に関する研究発表会をする予定である。
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