研究概要 |
ゴルドーニの『別荘3部作』に1761年のヴェネツィアの政変の反映を読み取る試み。 (1)上記戯曲は,上層市民階級の勝気な娘ジャチンタ(新世代の自由擁護主義者)と,彼女の父の友人フルジェンツィオ(伝統的市民道徳の擁護者)の思想的対立を軸に,3部に渡って展開され,最後にはジャチンタの屈服と伝統的道徳の受入れとなって幕が下りる。 (2)この3部作が上演されていた時期は,まさにヴェネツィア共和国が新旧対立の政変に翻弄されていた時期と重なっており、当時の観客は若い大胆なジャチンタの内に急進改革派を,老フルジェンツィオの内に伝統と良識の擁護派を認めて,この3部作を同時進行中の政変の寓意劇として享受したと思われる。いわゆる《際物》としての享受である。 (3)以上の仮説を証明するために,3部作の構造や登場人物の分析をすると同時に,ヴェネツィアのコッレル図書館所蔵の1761年政変に関する未刊の手続き資料を収集して,当時のヴェネツィア社会の政治状勢と様々な社会階層の政変に対する態度を分析した。
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