インド文学史の全般にわたり、すなわち古典サンスクリット文学から近現代語文学に至るまで、後代に名を残している数多の詩人たち、および様々な文献創作者たちのうち、前者に関して(そのうち特に古典を中心に)、彼らの出自、出身地、生涯の居住地、どのヴァルナ階級(バラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラ等)に属するか、信奉している宗教教派・神格は何か、など、社会的立場を伺うヒントになると思われる記録を、現存文献の中から拾い出す作業を進めた。 これら今回の観察項目に関しては、既に、従前の研究成果をもとに、文学史概説書の類の幾つかに言及されている場合も少なくないのだが、付随する参考事項が記述されている可能性を考慮して、極力、原典に直接あたり、確認作業にあわせて新規情報の収集に努めた。だが、この作業はかなりの時間を要し、サンスクリット読解能力のある補助員を擁しても、やっと30件ほど集めるにとどまった。また、ひとりの詩人に関して、すべての観察項目が揃って判明するわけではなく、最終的に通史的判断を下す際の方法論も再考しなければならない可能性が出てきた。 いずれにしても、できるだけ多くのデータを集めることが、今後の研究を進める上で重要だとおもわれるので、次年度も引き続き努めることにする。また、文芸作品以外の諸文献にも観察範囲を拡げていきたいと考えている。
|