本研究の最終年度に当たる本年度は、前半は主に昨年度末にベルリンの言語学コロキアムに於いて口頭発表した、東南アジア諸語で極めて特徴的な文レベルの"小辞"(いわゆる「文副詞」)の統辞論的行動様式に関する理論研究の論文執筆に充て、後半は今年度の最後に予定していたモン語現地調査の準備に割いた。論文は来年度の上半期には出版が予定されており、モン語に関する現地調査の報告も来年度の早い時期に、少なくとも音韻構造と文字体系についての予備的研究の成果を論文の形で発表したい。 本研究は取りあえず今年度をもって終了することとなるが、前研究に引き続いて現地調査をこまめに組み入れたことで、単に"希少価値"の高い小言語のみならず、比較的多類の話者を抱え、かなり知られた言語でありながら口語もしくはcolloquialな表現に関する資料が乏しかったことから一般言語学的議論ではあまり取り上げられなかった言語に関しても、一応は比較対照のベースは整ったと考えていい。詳しくは研究成果報告書に譲るが、類型論的理論研究にも一定の方向が示せたように思う。成果発表は「成果刊行促進費」に依りたい。 今後の課題は、本研究で主に扱った"大言語"に囲まれた少類民族の諸言語を克明に調査することで、その"生態的変化"から言語の普遍的発展バターンを帰納することにある。言語資料のデータベース化と共に次研究での成就を期したい。
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