研究概要 |
日本語の文処理における実時間処理(real-time processing)を検証するために再認課題を被験者に与えた場合,語順の違いに関係なく,主語優位の現象が見られた.被験者に与える課題を再認課題から再生課題へと変化させるとどのようになるのかを検討した.その結果,主語優位を示す被験者とそうでない被験者が見られた.すなわち,課題の相違によって被験者は異なる文処理ストラテジーを採用していることが示唆された.その成果をThe 2nd International Conference on Cognitive Scienceで発表した. 今までの研究では,文末以降にターゲット刺激を提示する方法での実験を行った.そこでさらに,空主語文を呈示している途中で刺激となる人名を呈示することにより,文が完全に終了する前にどのような処理の様相が観察されるのかを検証した.その結果,文末動詞が出現する以前に処理時間の延長が見られた.このことから,文を聴取している途中でトップダウン的な処理が行われていることが明らかとなった.その成果をInternational East Asian Psycholinguistics Workshopで発表した. さらに,脳波を使った実験として,「を」格助詞と動詞の間に不一致が生じた際の脳内の処理を検討した.具体的には「太郎が花子を殴った」という文と「^★太郎が花子を会った」という文を被験者に黙読してもらい,その際に生じる事象関連電位(ERP)を分析することにより,「を」格助詞と動詞の間の計算システムを検討した.その成果を日本心理学会第64回で発表した.
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